軽い=背負いやすいではない!
「軽いだけ」ランドセルにご注意
ランドセル症候群の誤解
ラン活を始めたママさんから、質問をいただきました。
テレビで「ランドセル症候群」を知り、ランドセルではなく、軽いナイロン製リュックを通学カバンにしたいです。おすすめはありますか?
ランドセル症候群とは、重いランドセルを背負って通学する小学生が、体の不調を訴える症状。骨格形成に悪影響を与える懸念もあり、親としては気になる話題です。
- 肩こり
- 腰痛
ランドセル症候群の原因は、ランドセルではありません。授業で使う学用品が、近年大幅に増えたことに起因します。
- 教科書ページ数が増加
※ 直近4年間で175.4%増量
※ 一般社団法人教科書協会(2021年データ)より - 補助教材が増加
- タブレット端末の持ち帰り
文部科学省でも、この問題を認識して「児童生徒の携行品に係る配慮(通称:置き勉)」を促しました。ところがこの通達に対する先生達の反応は、やや否定的。実態は担任教師の考え方に委ねられてます。
- 紛失・盗難リスクが心配
- 机が重くなり掃除が大変
- 自宅で復習できない
- 保護者宛ての手紙も置いて帰る
- 準備(忘れ物をなくす)習慣がつかない
「学習教材の増加は仕方ない。それならば、軽いナイロン製リュックを通学カバンにしてあげよう!」という考えの人も出てきました。ただそのアイデアはNGです。
リュック | ランドセル | |
---|---|---|
重量 |
軽い |
重い |
機能 |
低機能 |
高機能 |
メリット |
軽くてかさばる荷物(体操着や給食袋)の持ち運びに適している |
固くて重い荷物(水筒やタブレット)でも、左右バランスを保てる |
デメリット |
教材の詰め方を工夫しないと、左右の重みがアンバランスになる |
荷物が少ない時でも、ランドセル重量分の重みがある |
「軽いリュックがいいかも?」と考えている親御さんは、物事の一面しか見えてません。
例えば、普段お買い物に使うエコバッグをイメージしてください。エコバッグに食材を詰め込み過ぎて、半端ない負担感を感じた経験はありませんか?
ナイロンやポリエステル製のエコバッグは、軽くて柔らかい。でも荷重分散&荷重軽減する機能はありません。だから食材の重みがダイレクトに伝わり、苦痛を感じます。
高価な登山用ザックでも、パッキングが下手だと体への負担が増します。小学生が教材の重量を考えながら、リュックに荷物を詰め込むことはできません。
ランドセルは、子供の使用状況に合わせて、進化し続けている通学カバン。ドバっと荷物を詰め込んでも、最適なポジションで背負える工夫が随所にあります。
ランドセルを選ぶ時も、「軽いランドセル」を探すのでなく、「背負いやすいランドセル」を見つけてください。
「背負いやすいランドセル」のチェックポイント
≪チェックポイント≫
強度設計
耐久性(型崩れ防止)
ランドセルの型崩れは、背負い心地に影響します。小学生の肩こり・腰痛問題は、「ランドセルの重さ」より「ランドセルの型崩れ」と関係が深いです。
チェックポイント
一番型崩れしやすい「大マチ上部の開口部」に、変形を防止する補強材(樹脂)があるとベストです。お店や展示会へ行くなら、大マチ開口部へ力を加え、歪み具合や反発力を確認してみるといいです。
収容力の罠
昨今は、どのメーカーでも「軽い・大きい」をアピールしてます。ここで避けるべきは「耐久性」を犠牲にして、「収容力」をアップさせたランドセル。これは最悪です。ランドセルに入る量が増える分だけ、早期に型崩れが発生します。
チェックポイント
カタログで内部構造を丁寧に解説している良心的なメーカーを選びましょう。「耐荷重試験」や「押圧試験」の結果データを、公表しているメーカーなら安心できます。
肩ベルト
- 肩ベルトの立ち上がり
子供の肩にフィットするのは、肩ベルトが立体的に立ち上がっているタイプ。上の写真のようなランドセルがおすすめです。 牛革肩ベルトの場合は、立ち上がりでなくても問題ありません。入学当初は浮きますが、気にしなくていいでしょう。本格的に授業が始まり、荷物が重くなる頃には、肩に馴染んできます。 - 肩ベルトの形状
子供の胴体(胸・腰)に寄り添う形状(S型・X型)は、ランドセルの横ブレを防ぎます。体力がない低学年には最適。ただ子供が嫌がる場合(圧迫感)は、ストレートタイプで問題ありません。 高学年になり体が大きくなると、自然なストレート型のほうが背負いやすいという意見もあります。成長に応じてベストな形状が変わるので、神経質になる必要はありません。
背カン
ランドセル「本体」と「肩ベルト」を繋ぐ背カンは、重要パーツです。
【背カンの動き】
- 固定(動かない)
- 左右同時に動く
- 左右別々に動く
色々ありますが、背カンは動くタイプがおすすめ。背カンが動くことで、ランドセルを最適なポジション(背中の中心)へ誘導します。また着脱も楽になります。
直接体に触れる「背あて」
大型化に対応した最新モデルほど、背カンの厚みが増します。
そこで気になるのは、背あての機能。一般的にはランドセルの価格に比例して、機能性もあがります。
チェックポイント
- 素材
- 厚み(クッション性)
- 耐圧分散
- 通気性
【入学後】肩ベルト穴のこまめな調整
小学生の身長は、1年間で約6cm伸びます。さらに冬服で厚着になると、ベルトがきつくなる可能性が高いです。それなので、ベルト調整タイミングは毎年秋頃がおすすめ。
ランドセルの肩ベルトには、7~8個の穴(3~4cm間隔)があるので、定期的に肩ベルトの長さ調整をしてください。
- ランドセルトップが肩と同じ高さ
(横から見る) - 背負ったランドセルが地面に垂直
(少し離れて見る) - 背中とランドセルに隙間が少ない
(手を入れてみる)
肩ベルトが短いと窮屈で動きずらい。反対に長すぎると、後ろ重心(ランドセルがズレ下がって体から離れた状態)になり、その重みを支えるために猫背になりがちです。
ランドセル症候群(肩こり・腰痛)を防ぐには、肩ベルトの長さ調整が大事!
最近の機能的ランドセルなら、肩ベルトさえ合わせれば、あとは自動的に体に寄り添います。
ナイロン製リュックは、ランドセルより耐久性・機能性に劣ります。「軽い」という理由だけで選んでしまうと後悔するでしょう。
ランドセルを持ち運ぶキャリーケース(さんぽセル)などのアイデア商品も出てますが、基本はベルト調整で解決します。